概要
靴の表底は、歩行中に荷重が掛かった状態で地面に擦られることにより徐々に削れていきます。
表底の耐摩耗性が不足していると、表底が削られ、滑り止めの溝が薄くなっていき、この状態で滑りやすい路面を歩行すると、転倒事故など、思わぬ事故を引き起こす恐れがあります。
そのため、歩行時の摩耗作用に耐え得るかを確認するために、表底を研磨材で摩耗し、その時の重量損失や体積損失から耐摩耗性を確認する試験が「表底の耐摩耗性試験」です。
試験方法
表底の耐摩耗性(DIN式) ISO 20871
- 試料から直径16±0.2mmの円柱形試験片(厚さ6mm以上)を作成します。
- 重量及び密度を測定します。
- 作成した試験片を試験機にセットします。
- シリンダードラムの摩耗面に試験片を一定荷重で押し付け、回転ドラムを回転させながら水平方向に動かして摩耗させます。(速度:40回転/分、回転数:84回転)
※シリンダードラムの直径は150mm、研磨布の厚さは約1mmの為、シリンダードラムを84回転させた時の試験片が摩耗される距離は(150+1)×3.14×84×1000=39.827・・≒40mとなります。 - 摩耗前後の試験片の重量から重量損失・体積損失を測定します。
試験結果サンプル
下表は試験結果のサンプルです。
試験項目 | 試験方法 | 試験結果 | ||
---|---|---|---|---|
表底の耐摩耗性 | ISO 20871 | 重量損失(mg) | 体積損失(mm3) | 密度(g/cm3) |
106 | 88 | 1.21 |
QTEC基準
下表はQTEC基準です。
QTEC基準 | |||
---|---|---|---|
項目 | 試験方法 | 基準値 | |
表底の耐摩耗性 | ISO 20871 | 密度0.9g/cm3以上の場合 | 密度0.9g/cm3以下の場合 |
350mm3以下 | 200mg以下 |
表底の耐摩耗性(ウィリアム式) JIS K 6264-2 B法
- 表底から2cm角の試験片を作成します。
- 重量及び密度を測定します。
- 作成した試験片を試験機にセットします。
- 垂直に立てた研磨材の平面に、水平のアームに固定された2個の試験片を押しつけて摩耗させます。
- 摩耗前後の試験片の重量から摩擦エネルギーに対する体積損失を測定します。
下表は試験結果のサンプルです。
試験項目 | 試験方法 | 試験結果 |
---|---|---|
表底の耐摩耗性 | JIS K 6264-2 B法 | 6.24×105 mm3/MJ |
QTEC基準
下表はQTEC基準です。
QTEC基準 | |||
---|---|---|---|
項目 | 試験方法 | 基準値 | |
表底の耐摩耗性 | JIS K 6264-2 B法 | ゴム底 | 合成樹脂底 |
1.86×105 mm3/MJ以下 | 1.11×105 mm3/MJ以下 |
その他特記事項
必要試料は、表底パーツ1個もしくは製品の片足になります。