概要
インフルエンザウイルスやノロウイルスを始めとしたウイルスへの消費者の関心は年々高くなり、快適・清潔な生活を求め、繊維製品をはじめ、幅広い分野で抗ウイルス製品の需要が拡大しています。
このような背景のもと、QTECは「経済産業省 平成23~25年度 国際標準共同研究開発事業:繊維製品の抗ウイルス性試験方法に関する標準化(ISO化事業)」において、繊維製品の抗ウイルス性試験方法の研究開発を行ってきました。
また、ISO/TC38/WG23 Expertとして国際会議に参加し、ISO制定に向け活動しており、
2014年に繊維製品の抗ウイルス性試験方法(ISO18184 Textiles-Determination of antiviral activity of textile products)が発行され、2019年に第2版が改訂されました。
QTECでは、抗ウイルス加工繊維製品に対する抗ウイルス性試験として、
JIS L 1922及びISO 18184を用いた評価を行っています。
試験方法
- 試料0.4gに試験ウイルス懸濁液を0.2 mL接種します。
- 25℃で2時間作用します。
- 洗い出し液を20mL加え、試料からウイルスを回収します。
- 回収したウイルスを宿主細胞に感染させて、2~3日培養後、ウイルス感染価を測定します。
1)測定方法
a.プラーク測定法
プラーク数をカウントし、ウイルス感染価(PFU/sample)を測定します。
*A型インフルエンザウイルス(H3N2)のプラークの様子
プラーク:白い斑点部分。ウイルスが感染したことにより、細胞が変性していますb.50% 組織培養感染量(TCID50)測定法
ウイルスの感染によって生じる培養細胞の形態的変化を顕微鏡下で観察し、
ウイルス感染価(TCID50/sample)を測定します。
図1:正常なMDCK細胞
図2:インフルエンザウイルス感染後のMDCK細胞 - 対照試料と試験試料のウイルス感染価を比較し、抗ウイルス活性値を算出します。
<JIS L 1922の抗ウイルス活性値の算出方法>
減少値【M】< 1.0 の場合 抗ウイルス活性値【Mv】=Log(Va) – Log(Vc)
1.0 ≦ 減少値【M】≦ 2.0の場合 抗ウイルス活性値【Mv】=Log(Vb) – Log(Vc)
※対照試料の減少値【M】=log(Va)-log(Vb)log(Va):対照試料の試験ウイルス懸濁液接種直後の3検体の感染価常用対数の平均値
log(Vb):対照試料の2時間作用後の3検体の感染価常用対数の平均値
log(Vc):抗ウイルス試料の2時間作用後の3検体の感染価常用対数の平均
試験結果サンプル
- JIS L 1922の付属書G又はISO 18184のAnnex Fに、抗ウイルス効果の基準値(参考)が以下のように記載されています。
抗ウイルス活性値, Mv 効果の説明 JIS L 1922(付属書G) 3>Mv≧2.0 効果あり Mv≧3.0 十分な効果あり Antiviral efficacy value, Mv Standard ISO 18184(Annex F) 3>Mv≧2.0 Good effect Mv≧3.0 Excellent effect - (一社)繊維評価技術協議会では、抗ウイルス加工の繊維製品に対するSEKマーク認証を行っており、SEKマーク繊維製品認証基準では、抗ウイルス活性値の評価基準が、以下のように設定されています。
試験方法 ウイルス株 評価基準 JIS L 1922 A型インフルエンザウイルス(H3N2) 抗ウイルス活性値Mv ≧ 3.0 ネコカリシウイルス(F-9) ※耐久性試験として、一部の繊維製品を除いて、洗濯処理後の試験が必要です。
その他特記事項
- 試験対象ウイルス株及び宿主細胞:
試験対象ウイルス株はA型インフルエンザウイルス及びネコカリシウイルス(F-9)です。ウイルス株 宿主細胞 A型インフルエンザウイルス H3N2(香港型) エンベロープ有 MDCK細胞 H1N1(ソ連型) ネコカリシウイルス(F-9) ノロウイルスの
代替ウイルスエンベロープ無 CRFK細胞 - 必要サンプル量:1試験条件あたり約5g
- SEKマーク認証:
(一社)繊維評価技術協議会では、抗ウイルス加工の繊維製品に対するSEKマーク認証を行っています。QTECも指定試験機関として指定されており、抗ウイルス加工マークの認証に必要な試験を行っています。 - JNLA/ASNITE認定シンボル付き試験証明書の発行:
QTECは 2021年に(独)製品評価技術基盤機構(NITE)より国内初の抗ウイルス性試験所として認定され、JNLA/ASNITE認定シンボル付き試験証明書の発行が可能となりました。抗ウイルス関連製品の信頼性の向上のために、ISO/IEC 17025認定試験所から発行された試験証明書を入手し、是非ご活用いただければと思います。