概要
光触媒とは、光照射下で、酸化・還元作用によって、汚染物質の分解・除去、空気浄化、抗菌、抗かびなどの機能を発現する物質のことです。
光触媒の抗菌機能を利用するために、酸化チタンなどの光触媒効果により細菌の増殖を抑制する加工のことを光触媒抗菌加工といいます。
光触媒抗菌加工製品の抗菌性試験が、JIS R 1702(紫外光照射)、JIS R 1752(可視光照射)になります。
それぞれ、試料の種類によって、
ガラス密着法…光触媒抗菌加工/可視光応答型光触媒加工した繊維状材料(繊維製品)
フィルム密着法…光触媒抗菌加工/可視光応答型光触媒加工した平板状材料(プラスチック等の製品)
の光照射条件下での抗菌性を評価します。
試験方法
- JIS R 1702(JIS R 1752)
1)ガラス密着法
a.試験菌液を調整します。
b.試験片に試験菌液を接種し、その上に密着ガラス、保湿用ガラスを載せます。c.光照射下、あるいは暗所にて8時間放置します。
d.試験片をストマッカー袋に入れ、洗い出し用液を加えて菌を洗い出します。
e.寒天培地と混和し、培養します。
f. コロニー数を数え、生菌数を算出し、抗菌活性値を求めます。ΔS=(MBL-ML)-(MBD-MD)
ΔS:繊維状の光触媒抗菌加工材料の光照射による抗菌活性値
MBL:無加工試験片を紫外放射照度Lで光照射した後の3検体の試験片の生菌数の算術平均値の常用対数値
ML:光触媒抗菌加工した試験片を紫外放射照度Lで光照射した後の3検体の試験片の生菌数の算術平均値の常用対数値
MBD:無加工試験片を暗所に放置後の3検体の試験片の生菌数の算術平均値の常用対数値
MD:光触媒抗菌加工した試験片を暗所に保存した後の3検体の試験片の生菌数の算術平均値の常用対数値【JIS R 1752】
ΔS=(MB F-L-MF-L)-(MBD-MD)
ΔS:繊維状の可視光応答形光触媒抗菌加工材料の光照射による抗菌活性値
MB F-L:無加工試験片を可視光照射条件条件F-Lで光照射した後の3検体の試験片の生菌数の算術平均値の常用対数値
MF-L:可視光応答形光触媒抗菌加工した試験片を可視光照射条件F-Lで光照射した後の3検体の試験片の生菌数の算術平均値の常用対数値
MBD:無加工試験片を暗所に放置後の3検体の試験片の生菌数の算術平均値の常用対数値
MD:可視光応答形光触媒抗菌加工した試験片を暗所に保存した後の3検体の試験片の生菌数の算術平均値の常用対数値2)フィルム密着法
a.試験菌液を調整します。
b.試験片に試験菌液を接種し、その上に密着フィルム、保湿用ガラスを載せます。
c.光照射下、あるいは暗所にて8時間放置します。
d.試験片をストマッカー袋に入れ、不活化剤を加えて菌を洗い出します。
e.寒天培地と混和し、培養します。
f.コロニー数を数え、生菌数を算出し、抗菌活性値を求めます。【JIS R 1702】
ΔR=log(BL/CL)-log(BD/ CD)
R:平板状の光触媒抗菌加工材料の光照射による抗菌活性値
BL:無加工試験片を紫外放射照度Lで光照射した後の3検体の試験片の生菌数の平均値(個)
CL:光触媒抗菌加工した試験片を紫外放射照度Lで光照射した後の3検体の試験片の生菌数の平均値(個)
BD:無加工試験片を暗所に放置後の3検体の試験片の生菌数の平均値(個)
CD:光触媒抗菌加工した試験片を暗所に保存した後の3検体の試験片の生菌数の平均値(個)【JIS R 1752】
ΔR=log(BF-L/CF-L)-log(BD/ CD)
ΔR:平板状の可視光応答形光触媒抗菌加工材料の光照射による抗菌活性値
BL:無加工試験片を可視光照射条件F-Lで光照射した後の3検体の試験片の生菌数の平均値(個)
CL:可視光応答形光触媒抗菌加工した試験片を可視光照射条件F-Lで光照射した後の3検体の試験片の生菌数の平均値(個)
BD:無加工試験片を暗所に放置後の3検体の試験片の生菌数の平均値(個)
CD:可視光応答形光触媒抗菌加工した試験片を暗所に保存した後の3検体の試験片の生菌数の平均値(個)
試験結果サンプル
1.JIS R 1702 ガラス密着法:抗菌活性値≧2.0
フィルム密着法:抗菌活性値≧2.0
2.JIS R 1752 ガラス密着法:抗菌活性値≧2.0
フィルム密着法:抗菌活性値≧2.0
(一社)繊維評価技術協議会「SEKマーク繊維製品認証基準」
JIS R 1702 ガラス密着法で 抗菌活性値≧2.0かつ光照射による抗菌活性値≧1.0
その他特記事項
試験項目 | 試験試料の種類 | 試験菌種 |
---|---|---|
ガラス密着法 | 繊維状 | 黄色ぶどう球菌、肺炎かん菌 |
フィルム密着法 | 平板状 | 黄色ぶどう球菌、大腸菌 |
【試験必要量】
ガラス密着法:1菌種あたりA4サイズ1枚
フィルム密着法:1菌種あたり未加工試験片9枚、加工試験片6枚
【光照射条件について】
代表的な場所における紫外放射照度
紫外放射照度 | 代表的な場所 |
---|---|
0.25mW/cm2 | 昼間の窓際、光触媒機能を作用させるために使用される光源などを使う場合 |
0.10mW/cm2 | 昼間の室内(太陽光が入る窓から1.5m程度内側まで)、朝または夕方の窓際 |
0.01mW/cm2 | 昼間の室内(太陽光が入る窓から3m程度内側まで) |
0.001mW/cm2 | 太陽光が入らない昼間の室内、夜間の室内(蛍光灯の紫外線) |
・JIS R 1702での紫外光放射照度の上限:0.25mW/cm2
・JIS R 1752での可視光照射条件:100lx~3000lx
一般社団法人繊維評価技術協議会では、JIS R 1702(ファインセラミックス―光照射下での光触媒抗菌加工製品の抗菌性試験方法・抗菌効果:ガラス密着法)に基づく性能評価により、抗菌加工繊維製品の認証(SEKマーク)が行われています。
QTECでは一般社団法人繊維評価技術協議会の指定試験機関としてこれらの光触媒抗菌加工繊維製品の性能評価を行っています。