概要
繊維も含めて物質は摩擦すると帯電し、静電気が生じます。
静電気が起こりやすいと、スカートがまとわりついたり、ほこりがついたり、衣類の外観を損ねてしまいます。
帯電性試験では、このような生地の静電気の起こりやすさを評価します。
また、帯電が起こりにくい生地として、制電性素材があります。静電気による細菌やほこりの付着を防ぐために、精密機器や電子部品の工場や、医療、衛生、食品などの分野の作業服で用いられています。
帯電性試験は主に4種類あります。
| 試験の種類 | 試験結果単位 | 内容 |
|---|---|---|
| 半減期測定法 （JIS L 1094 A法） |
秒 | 試験片を帯電させたあと、帯電圧が1/2まで減衰する時間を測定します。 静電気の逃げやすさを評価します。 |
| 摩擦帯電圧測定法 （JIS L 1094 B法） |
V | 試験片を摩擦布で摩擦して発生した帯電圧を測定します。 静電気の起きやすさを評価します。 |
| 摩擦帯電電荷量測定法 （JIS L 1094 C法） |
μC/㎡ | μC/㎡ 試験片を摩擦布で摩擦して発生した電荷量を測定します。 静電気の発生量を評価します。 |
| 帯電電荷量 （JIS T 8118） |
μC/㎡ | 試験片を摩擦布で摩擦して発生した電荷量を測定します。 上記3種類の試験条件が湿度40%に対して、湿度30%とより厳しい条件の試験になります。 導電性繊維を用いた作業服のほこりの付着や放電障害などを評価します。 |
試験方法
半減期測定法（JIS L 1094 A法）
半減期測定機
試験方法
- 45㎜×45㎜の試験片を5枚採取します。
- 試験片を試験機（赤枠部）にセットします。
- ターンテーブルを回転させながら（ー）10kVの電圧を30秒間印加します。
- 印加を止め、ターンテーブルをそのまま回転させながら、帯電圧が初期帯電圧の1/2に減衰するまでの時間（秒）を測定します。
試験結果サンプル
| 帯電性（秒） | 10 |
|---|
評価の目安として、QTEC基準では半減期10秒以下かつ摩擦帯電圧3000V以下、または半減期60秒以下かつ摩擦帯電圧1500V以下を基準値としています。
その他特記事項
必要試料サイズは、30㎝×30㎝になります。
摩擦帯電圧測定法（JIS L 1094 B法）
摩擦帯電圧測定器
試験方法
- 50㎜×80㎜の試験片をたて・よこそれぞれ10枚採取します。
- 摩擦布から幅25㎜、長さ150㎜の大きさのものを摩擦布の種類（綿・毛）ごとにそれぞれ10枚採取します。
- 摩擦布を試験機にセットします。
- 試験片試験機にセットします。
- 回転ドラムを回転させて試験片を摩擦し、60秒後の帯電圧（V）を測定します。
- 摩擦布を取り替えて同様の操作をたて・よこそれぞれ5枚ずつ行います。
試験結果サンプル
| 帯電性（V） | 3000 |
|---|
評価の目安として、QTEC基準では半減期10秒以下かつ摩擦帯電圧3000V以下、または半減期60秒以下かつ摩擦帯電圧1500V以下を基準値としています。
その他特記事項
必要試料サイズは、30㎝×30㎝になります。
摩擦帯電電荷量測定法（JIS L 1094 C法/JIS T 8118）
帯電電荷量測定装置
試験方法
- 250㎜×350㎜の試験片をたて・よこそれぞれ3枚ずつ採取します。
- 試験片を規定の温湿度で標準状態になるまで調整します。
（JIS L 1094 C法は、20℃40%RH JIS T 8118は、20℃30%RH） - 試験片を除電装置を用いて除電します。
- 500㎜×450㎜の摩擦布（ナイロン・アクリル）をそれぞれ摩擦棒へ約5周ほど巻きつけて固定します。
- 摩擦棒で試験片を1秒間に1回の割合で5回繰り返し摩擦します。
- 試験片を帯電電荷量測定装置に入れ、指示電圧（V）を測定します。
- この操作を5回繰り返し、平均指示電圧（V）から単位面積当たりの帯電電荷量（μC/㎡）を求めます。
試験結果サンプル
| 帯電性（μC/㎡） | たて | よこ | |
|---|---|---|---|
| アクリル | 3.1 | 2.5 | |
| ナイロン | 0.9 | 0.3 | |
| 最大値 | 3.3（アクリル） | ||
たてよこでそれぞれアクリル・ナイロン摩擦布で試験した際の平均値を記載します。
最大値は、合計12枚の試験結果の最大値を記載します。
評価の目安として、QTEC基準では導電性繊維を含む製品で7μC/㎡以下を基準値としています。
導電性繊維とは、カーボンや金属など電気を通すポリマーを含んだ繊維を指します。導電繊維を配置することで静電気の発生を防ぐ性質を持ちます。
その他特記事項
必要試料サイズは、100㎝×100㎝になります。
