概要
吸湿発熱とは、繊維が「空気中を飛び回っている水分子」を「捕まえる」ことによっておこる発熱現象のことです。人間の体からは常に水蒸気が出ており、この水蒸気を繊維が吸湿することで発熱します。寒さを感じやすい場面での需要が高い機能性となっており、冬場の肌着やソックス、腹巻など寒さ対策のアイテムに付与されています。また電気や化石燃料を用いず体からの水蒸気によるサステナブルな衣服の機能性の一つとして注目されています。
- JIS L1952-1 第1部:最大吸湿発熱温度測定法
国際規格であるISO18782を基礎としています。低湿度空気を生地に供給して調湿した後、高湿度空気を供給して加湿します。供給する空気を低湿度から高湿度に切り替えたときの測定面の温度上昇を経時的に測定し、到達した最大温度と初期温度との差を「最大吸湿発熱温度」として算出します。 - JIS L1952-2 第2部:熱保持指数測定法
第1部と同様の操作を行い、最大吸湿発熱温度に到達した以降の生地温度を経時的に測定し、半減期(生地温度が最大吸湿発熱温度の半分まで生地温度が低下するまでの時間)と熱保持指数(発熱した後の冷めにくさを数値化したもの)を算出します。
試験方法
- 約60㎜×60㎜の試験片を4枚採取し、規程の方法で試験片を調整します。
- 試験片を試験機にセットし、低湿度空気を供給しながら初期温度を測定します。
- 試験片に供給する空気を低湿度空気から高湿度空気に切り替え、経時的に試験片測定面の温度を測定します。
- 試験片4枚の結果を平均し、次の式によって最大吸湿発熱温度ΔTmaxを求めます。
最大吸湿発熱温度ΔTmax=(Tmax−Tinitial)
Tmax:高湿空気供給時の試験片の測定面の最大温度(℃)
Tinitial:試験片の測定面の初期温度(高湿空気供給の切替直前60秒の平均温度)(℃) - JIS L 1952-2では、更に最大発熱温度の計測時点から下降していく温度の関係性から回帰曲線を求め、熱保持指数Ihk(℃・s)を算出します。
試験装置図
試験結果サンプル
下表は試験結果のサンプルです。
温度の時系列変化例
JIS L 1952-1 | 加工品 | 未加工品 |
---|---|---|
初期温度(℃) | 20.2 | 20.2 |
最大温度(℃) | 22.8 | 21.2 |
最大吸湿発熱温度(℃) | 2.6 | 1.0 |
JIS L 1952-2 | 加工品 | 未加工品 |
---|---|---|
半減期(S) | 376 | 130 |
熱保持指数(℃・S) | 700 | 90 |
最大吸湿発熱温度、熱保持指数は数値が大きいほど良い結果です。
試験項目 | 試験結果 | 評価目安 |
---|---|---|
JIS L 1952-1 | 最大吸湿発熱温度(℃)≧1.6 | 効果あり |
JIS L 1952-2 | 最大吸湿発熱温度(℃)≧1.6かつ熱保持指数(℃・S) ≧300 |
加工品、未加工品との差で評価することもあります。
その他特記事項
- わた状の素材や羽毛の評価では不向きな試験となっておりますのでご注意ください。
- 必要試料量:A4サイズ程度
- その他の試験方法
1)吸湿発熱性QTEC法
QTEC法では、実際の商品を小さくしたイメージのミニクッション、ダウンパックの状態に試料を作成することで、わた状の素材や羽毛なども評価をすることが可能です。
お気軽にご相談ください。
2)サーモグラフィによる表面温度測定
弊社ではご相談に応じてサーモグラフィを用いた「吸湿した際の表面温度測定」も可能です。性能差を視覚的に捉えることが出来ます。お気軽にご相談ください。