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寸法変化率(JIS L 1096)

概要

衣類を洗濯、又はドライクリーニングに出したら生地に縮みや伸びが発生して形が歪んでしまい、製品の外観を損ねてしまったという経験はありませんか?
この現象を寸法変化と呼び、衣類が水に浸漬、洗濯、プレス、ドライクリーニング処理された際に、寸法が伸びたり、縮んだりする事を指します。
寸法の変化が一定範囲を超える場合、例えば首回りの寸法が縮んで着用自体が出来なくなったり、形が歪んで外観を損ねる事になったりするため、消費者クレームに直結する項目になります。
生地の組成混用率、編地、織地の違いなどによって、寸法変化率は大きく異なります。
生地の特性と試験結果に基づき製品に適した取扱表示を決定することが重要です。

試験方法

  1. 試料を採取します。
    1)織物の場合の採取方法
    下表1の通り試験片をカットします。F法では2枚、F法以外は3枚採取します。

    表1 織物の場合の試験片種類(単位:㎜)

    試験の種類 試験片の大きさ
    (長さ×幅)
    測定区間の長さ
    A法(常温水浸せき法)
    B法(沸騰水浸せき法)
    C法(浸透浸せき法)
    D法(石けん液浸せき法)
    約250×250 200
    E法(洗濯機試験法) 約250×250 200
    F法(ワッシャ法) 約500×500 400
    G法(家庭電気洗濯機法) 約400×400 200
    H法(プレス法)
    J法(ドライクリーニング法)
    約250×250 200

     

    2)編物の場合の採取方法
    下表2の通り試験片を各2枚作ります。通常一重で調製しますが、F法、G法、J法の場合は生地を2枚重ねとし、図4通り、長さ方向の上辺及び下辺に約40㎜の縫い空きがあるように2枚を縫い合わせます。

    表2 編物の場合の試験片種類(単位:㎜)

    試験の種類 試験片の大きさ
    (長さ×幅)
    測定区間の長さ
    A法(常温水浸せき法)
    B法(沸騰水浸せき法)
    C法(浸透浸せき法)
    D法(石けん液浸せき法)
    約250×250
    約300×300
    200
    E法(洗濯機試験法) 約250×250 200
    F法(ワッシャ法) 約500×500 400
    G法(家庭電気洗濯機法) 約300×300
    約500×500
    200
    H法(プレス法) 約250×250 200
    J法(ドライクリーニング法) 約250×250
    約300×300
    約500×500
    200

     

  2. 試料のマーキングを行います。

    試料を作業台に放置し、下図1、2のようにたて、よこ方向(編物の場合はウェール、コース方向)に印を付け、測定点とします。処理前に各印の間隔を測定し、測定基準長とします。

    図1 マーキング

    図2 二枚重ねの際の縫代例

     

  3. 各試験方法の処理方法は下記に従います。
    1)浸せき処理方法
    処理方法 浸せき溶液 処理手順
    A法(常温水浸せき法) 25℃±2℃の水 30分間浸せき後、脱水・乾燥します。
    B法(沸騰水浸せき法) 沸騰水
    C法(浸透浸せき法) 非イオン界面活性剤を0.05%含む25℃±2℃の水溶液
    D法(石けん液浸せき法) 無添剤石けんを0.5%含む50℃±2℃の温水溶液 20分間浸せき後、試験片を取り出し水切りし、再度20分間浸漬し、脱水・乾燥します。

     

    2)洗濯処理方法
    処理方法 使用機器 処理手順
    E法(洗濯機試験法) 洗濯試験機 a.無添剤石けんを0.5%含む50℃±2℃の温水溶液に入れて、15分間運転します。
    b.3回すすぎして、再度5分間運転します。
    ⅽ.脱水・乾燥します。
    F法(ワッシャ法) シリンダー形洗濯機 F-1(低温ワッシャ法):
    a.約40℃の温水に試験片1.4kgを投入後、石けんを投入し、15分間運転します。
    b.新しい約40度の温水に替えて5分間運転し、再び替えて10分間運転します。
    ⅽ.遠心脱水後、プレスします。
    F-2(中温ワッシャ法):
    a.約60℃の温水に試験片1.4kgを投入後、石けんを投入し、30分間運転します。
    b.新しい約40度のお湯に替えて5分間運転し、再び替えて10分間運転します。
    ⅽ.遠心脱水後、プレスします。
    F-3(高温ワッシャ法):主に織物に適用する。
    a.約60℃の温水に試験片1.4kgを投入後、生蒸気を入れた後、石けんを投入し、運転を開始します。
    b.40分後、新しい約60℃の温水に替え、運転します。45分後再度同じ温度の温水に替え、10分後に排水、5分間水なしで運転します。
    c.遠心脱水後、プレスします。
    G法(家庭用電気洗濯機法) パルセーター形家庭用電気洗濯機法 JIS L 0217の103に規定する試験方法で実施します。

     

    3)プレス処理方法
    処理方法 処理手順 圧力条件
    H-1法(乾熱加圧法) 20秒間プレス、20秒間吸引 39kpa
    H-2法(蒸熱オープン法) 15秒間蒸気ふかし、15秒間吸引 蒸気圧490kpa
    H-3法(蓄熱加圧法) 20秒間蒸気ふかし、H-1法通りの圧力で20秒間プレス、20秒間吸引 蒸気圧490kpa
    H-4法(蒸熱ロック法) H-1通りの圧力で20秒間蒸気をふかしながらプレス、20秒間吸引 蒸気圧490kpa

     

    4)ドライクリーニング処理方法
    J-1法(パークロロエチレン溶剤 J-2法(石油系法)
    使用溶剤 パークロロエチレン溶剤 石油系溶剤
    処理温度 約40℃ 約35℃
    運転時間 15分間 35分間
    試験機器 ウォッシュシリンダ形洗濯装置
    乾燥方法 遠心脱水、もしくは紙や布し挟み、押し脱液後、自然乾燥

     

    5)乾燥方法
    乾燥方法 手順
    ライン乾燥(吊り干し) ライン乾燥 脱水後、たて方向又はウェール方向が垂直になるように吊るして乾燥します。
    ドリップ・ライン乾燥 脱水せずにライン乾燥します。
    スクリーン乾燥(平干し) スクリーン乾燥 脱水後、試験片の不自然のしわを除き、水平なスクリーンメッシュに載せて乾燥します。
    ドリップスクリーン乾燥 脱水せずにスクリーン乾燥します。
    タンブル乾燥 低温タンブル乾燥 60℃を超えない温度で試験片を乾燥します。
    高温タンブル乾燥 80℃を超えない温度で試験片を乾燥します。

     

  4. 乾燥過程を経た試験片を作業台に載せ、試験片を引き延ばさないようにしわを取ります。対になった二つの印間の距離を1㎜単位まで測ります。
  5. 以下計算式にてたて、よこ方向、またはウェール、コース方向それぞれ三つの測定区間の長さの平均値を算出し、寸法変化率を報告します。

ΔL=【(L2-L1)/L1】×100
   ΔL:寸法変化率(%)
   L1:処理前の長さ(㎜)
   L2:処理後の長さ(㎜)

試験結果サンプル

下表は試験結果のサンプルです。

試験項目 試験方法 試験結果
たて(ウェール) よこ(コース)
寸法変化率(%) JIS L 1096 D法 スクリーン -1.5 -1.8
寸法変化率(%) JIS L 1096 G法 ライン -0.5 +3.0
寸法変化率(%) JIS L 1096 J-1法 タンブル -0.8 -4.0

QTEC基準

下表はQTEC基準(抜粋)です。

QTEC基準
品目 項目 試験方法 基準値
ジャケット
・コート類

スカート
・パンツ類

寸法変化
(洗濯)
取扱い表示による タンブル乾燥
  織地   ±3%以内
  よこ編み -5~0%
  その他  -3~0%
吊または平干し
  織地   ±3%以内
  よこ編み -5%~+2%
  その他  -3%~+2%
寸法変化
(ドライクリーニング)
JIS L 1096
J-1,J-2法
寸法変化率 ±3%以内
※水洗い不可、ドライクリーニング可表示製品に適用
※紳士服(スーツ)は±2%以内
寸法変化
(プレス)
JIS L 1096
H-2法
織地    ±2%以内
編地    ±3%以内
※目的に応じて、他の試験方法を用いても良い。
セーター類
カットソー類
寸法変化
(洗濯)
取扱い表示による タンブル乾燥
 よこ編み -8~0%
 その他  -6~0%
吊または平干し -6~+5%
寸法変化
(ドライクリーニング)
JIS L 1096
J-1,J-2法
よこ編み 丈 -5~+3%
     幅 -6~+5%
その他  ±3%
※水洗い不可、ドライクリーニング可表示製品に適用
寸法変化
(プレス)
JIS L 1096
H-2法
±3%以内
※目的に応じて、他の試験方法を用いても良い。
布帛シャツ類 寸法変化
(洗濯)
取扱い表示による ±4%以内
※ドレスシャツの衿 ±1.2%以内
寸法変化
(ドライクリーニング)
JIS L 1096
J-1,J-2法
±3%以内
※水洗い不可、ドライクリーニング可表示製品に適用
寸法変化
(プレス)
JIS L 1096
H-2法
±2%以内
※目的に応じて、他の試験方法を用いても良い。
下着類 寸法変化
(洗濯)
取扱い表示による タンブル乾燥
 織地    ±5%以内
 よこ編み  -8~0%
 その他   -6~0%
吊または平干し
 織地    ±5%以内
 よこ編み  -8~+5%
 その他   -6~+5%
寸法変化
(ドライクリーニング)
JIS L 1096
J-1,J-2法
±3%以内
※水洗い不可、ドライクリーニング可表示製品に適用
寸法変化
(プレス)
JIS L 1096
H-2法
織地 ±2%以内
編地 ±3%以内
※目的に応じて、他の試験方法を用いても良い。

※洗濯による寸法変化率の場合、よこ編み、楊柳など伸縮性のある製品で着用に支障の無いものは横方法の縮みを判定から除外。

その他の品目基準の詳細は、お問い合わせフォームより随時ご対応しています。遠慮なくお問い合わせください。

その他特記事項

必要試料量目安: 浸せき処理 40×40㎝
         洗濯処理  織地 50×50㎝
               編地 80×80㎝
         ドライ処理 織地 50×50㎝
               編地 80×80㎝
         プレス処理 50×50㎝

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