概要
主に織地に適用する試験方法です。
着用中の負荷により縫目付近の糸がスリップして隙間が出来てしまう現象のことを滑脱と呼びます。特に柔軟加工された生地や絹繊維が使われた生地において発生しやすい傾向があります。
試験結果が良くない生地は、滑脱防止テープの使用、縫製仕様の工夫などの対策が必要になってきます。
試験時の荷重には2種類あり、薄地は49.0N、厚地の場合は117.7Nの荷重を適用します。
滑脱が発生している生地
試験方法
- たて及びよこ方向にそれぞれ試料5枚を採取します。
- 生地の表が内側になるように、長辺を折り、その折り目部分に布目に沿って二つに切断します。
- 切断面から1㎝の位置で下図のように、本縫いで生地を縫い合わせます。縫目数は5針/㎝とします。
試料調製方法
- 定速伸長形引張試験機のグラブ法用つかみ具の上下の間隔を7.6㎝にセットして、試料を取り付けます。
- 引張速度を30㎝/minに設定し、試験を開始します。
※縫目に対して垂直に力が加えられるように、上下つかみ具が試験片の縫目に対して水平にセットします。試験中試料が引っ張られる様子
- 試験終了後、つかみ具から取り外したら1時間放置します。
- 放置後、試験片の縫目に対して直角方向に、縫目の滑りの最大孔の大きさ(下図のa+a`)を0.1㎜単位で測定します。
測定方法
試験結果サンプル
試験項目 | 試験方法 | たて | よこ |
---|---|---|---|
滑脱抵抗力(㎜) | JIS L 1096 B法 荷重49.0N |
1.0 | 1.1 |
QTEC基準
下表はQTEC基準(抜粋)です。
QTEC基準 ジャケット・コート類 | ||
---|---|---|
項目 | 試験方法 | 基準値 |
滑脱抵抗力(㎜) | JIS L 1096 B法 薄地:49.0N 厚地:117.7N |
薄地:3mm以内 厚地:5mm以内 |
生地で不合格の場合、実際の縫製仕様で試験を実施し、判定を行って良いとしています。
その他特記事項
結果に関するご注意:たて方向の滑脱とは、たて糸上をよこ糸が滑ることを指し、よこ方向の滑脱とは、よこ糸上をたて糸が滑ることを指します。
よこ糸が力によって移動した距離が、たて方向の試験結果となりますので、ご注意ください。
必要試料量目安:50㎝×50㎝