概要
ダウンウエア着用中に羽毛が吹き出すと、製品外観の品位を損ねたり、吹き出した羽毛が他のものに付着するなどの問題を引き起こします。
羽毛製品において、羽毛吹き出しはよくご相談いただく苦情の一つに挙げられます。
この試験では専用のタンブル乾燥機を用いて、羽毛製品の使用状態を想定した羽毛吹き出し具合を評価します。
吹き出しの事例 | |
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![]() 縫い合わせ部からの羽毛吹き出し |
![]() キルティング部からのネックフェザー吹き出し |
試験方法
日本羽毛製品協同組合(日羽協)が定めた試験方法JDFA-TM013を引用しています。
- 日羽協規定のタンブル乾燥機に負荷用ゴム管 10 本と試験試料を入れ 40℃設定で60分間運転します。
- 乾燥機内の温度が低下してから試験試料を取り出し、脱落した羽毛・フィルターで捕集した羽毛・ゴム管内外や試験試料に付着した羽毛を採取します。
- 生地表面や縫目からの吹出し途中の羽毛個数と吹出し部位を記録し採取します。
(吹出し羽毛の先端が約 5mm 以下で目立たない場合はカウントしない) - 採取した羽毛を標準状態で調整後、ダウン、 フェザー、ファイバーに分類し個数及び質量を測定します。ただし、糸状フェザーはファイバーに分類し、ファイバーの個数については判定から除きます。

羽毛吹き出しタンブル乾燥機

羽毛が吹き出した製品
試験結果サンプル
下表は試験結果のサンプルです。
試験結果 羽毛吹き出し 日羽協 JDFA TMー013 | ||||
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試験項目 | 単位 | 試験結果 | 備考 | |
吹き出し羽毛個数 | ダウン | 個数 | 1 | 生地表面からの吹き出し ダウン1個 フェザー2個 ファイバー7個 縫い目からの吹き出しファイバー43個 |
フェザー | 個数 | 2 | ||
評価 | ー | 少ない | ||
吹き出し羽毛総質量 | 総質量 | mg | 6.5 | |
評価 | ー | 注意 | ||
判定 | ー | 合格 |
QTEC基準
下表はQTEC基準です。
※QTECでは日羽協の試験方法を用いて、基準値に設定しています。
QTEC基準 羽毛吹き出し 日羽協 JDFA TMー013 | ||
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項目 | 吹き出し量 | 評価 |
合計羽毛 (個数) |
5未満 | 少ない |
5~9 | 注意 | |
10以上 | 多い | |
合計 羽毛 質量 (mg) |
5未満 | 少ない |
5~9 | 注意 | |
10以上 | 多い |
判定 | 個数と質量の評価 |
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合格 | 両方共「少ない」 一方「少ない」、一方「注意」 |
不合格 | 上記以外の組み合わせ |
その他特記事項
- 必要試料量
試験に必要な試料量は製品状態で1点を提出してください。
尚、製品が準備できない場合、寝装品など製品の大きさが試験に適さない場合はダウンウエアを模した試料を作製することにより試験が可能ですのでご相談ください。 - 羽毛吹き出しの主な原因
a)縫製の問題
縫製での主な原因には、縫針の損傷、縫針と縫糸の組合せ不適性、パーツの縫合せ不良、ダウンパックの裁目処理不良等があります。
その他として、縫い位置などにマークを付けるとき、ダウンパックに切込みを入れてしまう不手際も見られます。
羽毛製品には一般的な布帛製品の縫製仕様や手順とは異なる注意が必要です。b)側生地の問題
ダウンウエアの側生地は薄地で細デニール使いの高密度織物が用いられ、通気性は非常に小さい値になっています。現状のダウンウエア素材は1.0cm3/cm2・s以下が多くダウンプルーフ性は十分あります。しかし、薄地のために羽毛が容易に突き刺さり、生地を通過し易くなります。また、針穴が大きくなりやすい傾向があります。c)羽毛品質の問題
ファイバー、ネックフェザー、未熟フェザーの混入増加の問題があります。
ファイバー類は縫い目から吹き出し易いので、できるだけ少なく管理することが必要です。
一方、ネックフェザーは通常のフェザーよりも細く短い為、縫い目や生地から吹き出し易い傾向があります。未熟フェザーは元羽軸が破損し、先が尖ったフェザーになり易いです。そうなると生地に突き刺さったり、縫い目から吹き出し易くなります。これらはフェザー分類試験をすることにより、夫々の混入割合がわかります。
吹き出した羽毛のサンプル | ||
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![]() ファイバー |
![]() ネックフェザー |
![]() 未熟フェザー |