概要
厚生省令第34号は「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律施行規則」、JIS L 1940-1は「繊維製品-アゾ色素由来の特定芳香族アミンの定量方法」のうち一般試験、JIS L 1940-3は「繊維製品-アゾ色素由来の特定芳香族アミンの定量方法」のうち4-アミノ【アゾ】ベンゼンを放出する特定アゾ色素の使用の検出について規定されています。
私たちが日常使用していたり、着用している衣服やタオル等繊維製品には様々な染料を利用してデザイン性のある模様や個性的なカラーを採用していますが、その染料は安全なものでしょうか?もし、発がん性物質が含まれているとしたら私たちの健康にとって大変な問題になるでしょう。アゾ染料とはあまり聞きなれないかもしれませんがポリエステルをはじめとする化学繊維だけでなく、綿やシルク、革製品でのオレンジ色、赤色、黒色や紫色等の染料に使われていることが多い染料です。
試験方法
JIS L 1940-1
- サンプルは3色まで1つにまとめられます。3色で1gになるようにサンプルを採取します。
ただし、分析後に特定芳香族アミンの検出が認められた場合、この3色はそれぞれ1gずつ再試験を行うため、余裕を持って用意します。 - サンプルは大きく分けて使用する染料により、2つに分かれます。
1)分散染料
主にポリエステル、モダクリル、ナイロン、アセテート等の合成繊維に使用される
2)分散染料以外
主に綿、麻、毛、絹、天然皮革などの天然繊維に使用される
1)のサンプルを分析可能な状態にするためには、有機溶剤で抽出後、還元分解操作を行い、目的物質を検出しやすくするため分離精製、濃縮操作を行います。この時、サンプルは1mLくらいまで濃縮されます。
2)の分散染料以外のサンプルは、直接還元が可能なため、溶媒抽出の作業や濃縮操作は不要です。 - ガスクロマトグラフィー質量分析計、高速液体クロマトグラフィー質量分析計等の機器分析を行い、試験します。
規制対象物質は24種類あります。下記の別表を参照ください。
JIS L 1940-3
基本的には1940-1と同じように溶媒抽出→機器分析の流れは変わりませんが前処理に多少の違いがあります。4-アミノ【アゾ】ベンゼンの検出が目的となります。
厚生省令第34号
JISと分析の流れはほぼ変わりませんが、一部抽出の際に使用する有機溶剤に違いがあります。
No. | 物質名 | CAS番号 | IARC分類 |
---|---|---|---|
1 | 4-アミノビフェニル | 92-67-1 | 1 |
2 | ベンジジン | 92-87-5 | 1 |
3 | 4-クロロ-o-トルイシン | 95-69-2 | 2A |
4 | 2-ナフチルアミン | 91-59-8 | 1 |
5 | o-アミノアゾトルエン | 97-56-3 | 2B |
6 | 2-アミノ-4-ニトロトルエン | 99-55-8 | 3 |
7 | p-クロロアニリン | 106-47-8 | 2B |
8 | 2,4-ジアミノアニソール | 615-05-4 | 2B |
9 | 4,4′-ジアミノジフェニルメタン | 101-77-9 | 2B |
10 | 3,3′-ジクロロベンジジン | 91-94-1 | 2B |
11 | 3,3′-ジメトキシベンジジン | 119-90-4 | 2B |
12 | 3,3′-ジメチルベンジジン | 119-93-7 | 2B |
13 | 3,3′-ジメチル-4,4′-ジアミノビフェニルメタン | 838-88-0 | 2B |
14 | p-クレシジン | 120-71-8 | 2B |
15 | 4,4′-メチレン-ビス-(2-クロロアニリン) | 101-14-4 | 1 |
16 | 4,4′-オキシジアニリン | 101-80-4 | 2B |
17 | 4,4′-チオジアニリン | 139-65-1 | 2B |
18 | o-トルイジン | 95-53-4 | 1 |
19 | 2,4-トルイレンジアミン | 95-80-7 | 2B |
20 | 2,4,5-トリメチルアニリン | 137-17-7 | 3 |
21 | o-アニシジン | 90-04-0 | 2B |
22 | 4-アミノアゾベンゼン | 60-09-3 | 2B |
23 | 2,4-キシリジン | 95-68-1 | 3 |
24 | 2,6-キシリジン | 87-62-7 | 2B |
( IARCの発がんリスク分類 )
1 | ヒトに対して発がん性がある (Carcinogenic to human) |
2A | ヒトに対しておそらく発がん性がある (Probably carcinogenic to human) |
2B | ヒトに対して発がん性の可能性がある (Possibly carcinogenic to human) |
3 | ヒトに対する発がん性について分類できない (Not classifiable as to its carcinogenicity to human) |
4 | ヒトに対しておそらく発がん性がない (Probably not carcinogenic to human) |
試験結果サンプル
「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」においては、30mg/kg以下が規制値となります。
その他特記事項
必要なサンプル量 1色あたり10gが目安になります。
特定芳香族アミンは日本だけではなく欧州(EN)、国際規格(ISO)、中国(GB)等にも規制、基準があります。