Knowledge

仕上げ加工

反物は染色後、仕上げ加工を施し商品価値を高めてから通常出荷されます。繊維素材の持つ機能や特性を充分に発揮できるようにすることを「一般仕上げ加工」といい、新たに機能を付与することを「機能加工」といいますが、多くの場合に「一般仕上げ加工」と「機能加工」をあわせて「仕上げ加工」と呼んでいます。

ここでは主な「一般仕上げ加工」と「機能加工」について紹介します。

一般仕上げ加工

一般仕上げ加工は下記のように分類することができます。

風合い調整

1)柔軟加工
繊維の種類に合わせて各種の界面活性剤・シリコーンやポリエチレンの乳化物などを用いて処理を施し、繊維間の摩擦抵抗を減少させて柔軟化させる加工です。その他、揉みや叩きなどの機械的作用により柔軟化させることもあります。

2)糊仕上げ加工
でんぷん、ポリビニルアルコールなどの水溶性糊剤やビニル系樹脂エマルジョンなどの糊剤を用いて処理を施し、適度なはりと形態の安定性を与える加工です

生地ゆがみ修正

1)ヒートセット加工
熱可塑性の合成繊維及び合成繊維混用の織物に、テンターを用いてテンションを掛けながら熱を加えてセットをし、寸法と形態を安定させる加工です。

2)防縮加工
繊維製品の寸法変化には、洗濯などにより生地のもつ内部ひずみが解放され安定状態に戻ろうとして生じる「緩和収縮」、湿潤により繊維が膨潤し組織を圧縮するために生じる「膨潤収縮」、湿潤と揉み作用によって繊維のスケールが絡みあって生じる毛特有の「フェルト収縮」、熱可塑性の繊維がセット温度付近で起こる「熱収縮」、毛繊維は水分を吸収すると伸び、発散すると縮む「ハイグラルエキスパンション」等があります。このような種々の収縮を防止するための主な防縮加工について紹介します。

a)サンフォライズ加工
綿素材の織地で行われることが多く、水蒸気でリラックスさせた生地を熱シリンダーとラバーベルトの間で強制的に収縮させる加工です。化学薬品を使用しないので安全性が高いのが特徴です。

b)樹脂加工
ポリウレタンやポリエチレンなどの熱可塑性の樹脂を用いて処理を施し、繊維内部に樹脂を形成させることにより、繊維の湿潤による膨潤をし難くし収縮しなくなるようにする加工です。

c)羊毛の防縮加工
羊毛にはスケールがあり、スケールが水分により開き摩擦係数の異方性が高くなり、揉み作用が加わると繊維が移動し収縮やフェルト化が発生します。このスケールを塩素系の薬剤でスケールを取り除いたり、スケールを樹脂で覆ったりすることにより収縮しなくなるようにする加工です。 

静電気防止

一般に合成繊維は染色後、油剤類が除かれ摩擦による帯電が起きやすくなっています。これを防ぐために吸湿性の帯電防止剤を用いて処理を施します。

生地表面調整

1)カレンダー加工
ローラーなどを用いて生地表面を圧迫平滑化することにより、表面の光反射を改善し光沢感を出す加工です。

2)エンボス加工
金属ローラーの表面に所要の柄や模様を彫刻した金属ローラーと加熱した弾性ローラーとの間に生地を通すことにより、生地表面に柄・模様・凹凸・光沢を与える加工です。

3)起毛加工
針や研磨布などを用いて生地表面を引っかいたり、摩耗することにより毛羽立たせ保温性や柔軟性を持たせる加工です。

4)オパール加工
耐薬品性の異なる2種の繊維を混用した生地に薬剤処理を施し、片方の繊維を分解または溶解除去して透明感のある模様を得る加工です。

5)プリーツ加工
熱可塑性のある合成繊維や半合成繊維織物に熱や蒸気を当て、ひだ・折目を付ける加工をプリーツ加工といいます。天然繊維やレーヨンも同様に可能ですがプリーツ保持性が低くなります。

6)フロック加工
接着剤(バインダー)を塗布した生地の表明に、短く切断した繊維(フロック)を静電気を使用し直立させた状態で植毛をする加工です。

7)ラミネート加工
生地にフィルムを貼り付ける加工です。

8)コーティング加工
ラミネートはフィルムを貼り付けるのに対して、コーティングは生地に樹脂を塗布する加工です。

9)ボンディング加工
2種類またはそれ以上の異なる布を貼り合わせる加工です

機能加工

機能加工は下記のように分類することができます。

W&W加工(ウォッシュ・アンド・ウエア加工)

綿は耐洗濯性に優れているものの、しわになりやすく洗濯後にアイロン掛けが必要ですが、綿及びその混紡製品を洗濯・乾燥後・アイロンを掛けずに着用できることを目的とする加工をW&W加工(ウォッシュ・アンド・ウエア加工)といいます。主な加工方法は下記になります。

1)VP加工
縫製後にホルマリンを主体としたガスを繊維内部に浸透させ繊維同士を結びつける加工。

2)ポストキュア加工
液体アンモニア処理をした生地に樹脂加工剤を施し、縫製した後に加熱処理する加工。キュアリングとは、加熱処理によって樹脂を反応させる工程のこと。

3)プレキュア加工
生地の段階で樹脂加工と加熱処理を施し、縫製後にも加熱処理する加工。

撥水加工

撥水剤(フッ素系樹脂*、シリコーン系樹脂)を生地表面にコーティングすることにより、水を玉状にして弾く加工です。

UVカット加工

繊維中に酸化チタンを練り込んだり、生地に紫外線を吸収する薬剤をコーティングしたりすることにより、太陽光に含まれる紫外線を遮断して皮膚を保護する加工です。

*:フッ素系撥水剤の一つである「PFOA又はその塩」について、ストックホルム条約第9回締約国会議(令和元年5月)において、新たな廃絶対象物質が決定されたことを踏まえ、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律第2条第2項に規定された第一種特定化学物質として指定されました。

詳細は下記をご参照ください。

ペルフルオロオクタン酸(PFOA)とその塩及びPFOA関連物質