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ペルフルオロオクタン酸(PFOA)とその塩及びPFOA関連物質

繊維製品とPFOA

ペルフルオロオクタン酸(PFOAはピーフォアと読みます。)は有機フッ素化合物の一種であり、分子の中に炭素(C)を8個持っていることから「C8(シーハチ)」と呼ばれることもあります。有機フッ素化合物は水や油をはじき、熱に強く、薬品にも強いといった、とても便利な性質を持ちます。それを生かし、フッ素樹脂加工のフライパンや、泡消火剤、繊維製品等に利用されています。繊維製品では撥水、撥油、防汚の機能を付加することによって、建設・土木、製造現場で着用する作業着はもちろんのこと、最近大きく流行になったアウトドア衣料にも活用されています。

 

 

そんな便利な有機フッ素化合物ですが、ごくわずかに含まれるペルフルオロオクタン酸(PFOA)という物質が地球環境や人体に影響を及ぼす恐れがあることが懸念されるようになってきました。PFOAとその塩(アンモニアやカリウム、ナトリウム、銀が結合して塩(えん)になったもの)は、排出されると自然環境下では分解されず(永遠の化学物質、フォーエバーケミカルとも言われています)生物の中に蓄積される危険性が指摘されており、2019年5月、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約【ポップス条約】)にて国際的にこの物質の製造や使用の廃絶に向けて取り組む合意が加盟国の間でなされました。

POPs条約(METI/経済産業省)

欧州ではすでに(2017年)、REACH規則(* Registration, Evaluation, Authorization and Restriction of Chemicals)の制限対象物質リスト(付属書 XVII)が改正され(※1)、PFOAとその塩およびPFOA関連物質が追加されており、その後、日本では2021年に「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」(化審法)にて第一種特定化学物質(難分解性、高蓄積性及び長期毒性又は高次捕食動物への慢性毒性を有する化学物質)に指定されています。

「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律施行令の一部を改正する政令」が閣議決定されました (METI/経済産業省)

(※1: 2020.8.5に「Entry 68 パーフルオロオクタン酸およびその塩」はEU POPs規則を優先するということで削除されたばかりですが、パーフルオロオクタン酸より炭素数の多い「Entry 68 直鎖、分岐鎖パーフルオロカルボン酸(CnF2n+1COOH、n=8, 9, 10, 11, 12, 13 (C9-C14 PFCAs))とその塩およびその組み合わせを含む」という形で置き換えられました。(パーフルオロオクタン酸はC7F15COOH))

2023年現在、更なる安全性を考慮して、環境省が水質に関する目標値の設定を検討する動きが出てきています(※2)

これらを受けて、繊維業界では代替製品の開発が進められており、だんだんと一般にも販売されてきています。皆様の周りでもそういった技術を利用した安全、安心な衣料を目にする機会が増えていくかもしれません。

(※2: PFOS・PFOAに係る水質の目標値等の専門家会議(第1回)の開催について | 報道発表資料 | 環境省 (env.go.jp)