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フタル酸エステル類

フタル酸エステル類と規制について

フタル酸エステルとはフタル酸とアルコールが脱水反応してできるもので、塩化ビニル樹脂を中心とした樹脂の可塑剤として利用されています。フタル酸エステルはいくつも種類があるため、フタル酸エステル類として、話を進めさせていただきます。塩化ビニルを重合したポリマーはそのままでは硬くて脆いのですが、可塑材であるフタル酸エステル類を添加すると柔らかく、しなやかになり、加工がしやすくなります。添加する量によって硬度を調整することができ、硬さを生かした製品としては、塩ビパイプ、柔らかさを生かした製品としては鞄や靴などの雑貨品などがあります。また、こういった可塑剤以外にも食品パッケージ、おもちゃ、ビニールフロア、接着剤、洗剤、潤滑油、ヘアスプレー、医療用品などにも利用されており、私たちの周りではフタル酸エステル類がありふれた存在であるといえます。

 

便利で汎用性の高いフタル酸エステル類ですが、私たちの健康にとって、いくつかの危険性が考えられるため(内分泌かく乱化学物質の疑いがあり、接触移行性の高い物質です)現在では規制を設けて使用を制限している種類があります。例えば、EUでの規制、RoHS指令(ローズ指令)があります。

RoHS指令(ローズ指令)とは、電気・電子機器(EEE)などの特定有害物資の使用制限に関するEUの法律です。2003年2月に最初の指令(通称RoHS1)が制定され2006年7月に施行。2011年7月に改正指令(通称RoHS2)が施行されています。RoHS(ローズ)とは、Restriction of Hazardous Substancesの頭文字をとったもので、日本語では、有害物質使用制限指令とも呼ばれます。(なお、RoHSという言葉は通称であり、原文(EU官報名)の規定にはありません。従って国や企業により呼称が異なるため、EU官報名である2002/95/EC 2011/65EU (EU)2015/863と呼んだほうが明確です。)

RoHS指令では最初に以下の6物質が規定されました。

■RoHS6物質

①鉛(Pb)   

②水銀(Hg)    

③カドミウム(Cd)

④六価クロム(Cr 6⁺

⑤ポリ臭化ビフェニル類(PBB類)    

⑥ポリ臭化ジフェニルエーテル類(PBDE類)  

ここへ、4物質のフタル酸エステル類が2019年7月に追加されました。((EU)2015/863)国内ではRoHS2、海外ではRoHS3と呼ばれています。

■RoHS 10物質(追加の4物質)

⑦フタル酸ビス (2-エチルヘキシル)(DEHP)

⑧フタル酸ブチルベンジル (BBP)

⑨フタル酸ジブチル (DBP)

⑩フタル酸ジイソブチル (DIBP)

他、EUでの規制には

■欧州指令2005/84/EC(おもちゃ及び子供用品)

■廃電気電子機器指令(改正WEEE指令:2012/19/EU)

REACH規則

米国での規制には

■CPSIA Section 108(子供用おもちゃ及び育児用品)

■California Proposition 65

日本の規制では

■厚生労働省関連(玩具)【食品衛生法に基づく】

■厚生労働省関連(食品用器具・容器包装)【食品衛生法に基づく】

■化審法関連

があります。それぞれ、対象製品や適用範囲が異なるため注意が必要です。

 


フタル酸ビス (2-エチルヘキシル)(DEHP)の構造式>