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重金属について

重金属の種類と様々な規制

重金属とは、比重が4~5以上の金属を指します。その中には私たちの人体にとって必須ミネラルであるものも含まれていますが、有害で猛毒のものも含まれています。ここでは、代表的な重金属をいくつかご紹介したいと思います。

カドミウム

周期表第12族原子番号48番に位置するカドミウムは、過剰摂取するとカドミウム中毒となり、腎臓の障害とそれに伴う骨や関節の障害、貧血といった症状が現れます。公害として知られているイタイイタイ病の原因物質でもあります。ニッケル・カドミウム電池の原料に利用されていますが、二次電池はカドミウムを利用しない、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池に移行しつつあります。


周期表第14族原子番号82番に位置する鉛は、はんだの材料、鉛蓄電池(自動車のバッテリー)、放射線の遮蔽材として重要な産業材料です。柔らかい金属のため加工しやすく、比較的反応性が良いため(酸にもアルカリにも反応する両性金属でもあります)、人類は古代より鉛を多用してきました。例えば、おしろいや顔料としての鉛白、水道管や塗料の原料等です。しかし、鉛は生物の体内に吸収されて蓄積し、鉛中毒になることがあります。


水銀

周期表第12族原子番号80番に位置する水銀は、金属でありながら、常温、常圧で凝固しません。古代の日本ではみずかねと呼ばれ、奈良の大仏の金メッキをする際に金アマルガム(水銀と金の合金)を利用したそうです。また、辰砂といって、硫化水銀は不老不死の力があると信じられていました。

現代においても金属水銀は未だ重要な産業材料です。しかしながら、時に金属水銀はある条件下において、有機水銀に変化してしまうことがあります。この有機水銀は生物にとっては強い毒性があり、かつ生物濃縮を引き起こします。有機水銀による中毒は多くの方に知られている水俣病があります。この公害を繰り返さないため、経済産業省は「水銀に関する水俣条約」を2017年に発行しています。
水銀に関する水俣条約(METI/経済産業省)


クロム

周期表第6族原子番号24番に位置するクロムは、めっき、ステンレス鋼、皮革のなめし等に利用されています。単体のクロム、3価のクロムは毒性がないのですが、ある条件下において、3価クロムは酸化して6価クロムに変化してしまうことがあります。この6価のクロムは有害で強い酸化作用を持ち、人体に対して猛毒です。6価クロムによる土壌汚染として、1973年、東京都江東区の土地に埋められていたクロム鉱滓から6価クロムが染み出し、大きな社会問題となりました。6価クロムの代表的な中毒症状として鼻中隔穿孔が知られています。また、発がん性があり、皮膚、気道障害が起こることがあります。


ヒ素

周期表第15族原子番号33番に位置するヒ素は、生物に対する毒性が大変強く、歴史や推理小説からその名前を目にすることもあると思います。しかしながら、ヒ素は体内に残留し、容易に判別されることから「愚者の毒」という俗称がついています。現在、ヒ素は殺鼠剤として、あるいは半導体材料として利用されています。

 

これ以外にも、金や白金といった貴金属から、鉄や亜鉛といった卑金属、ウランやプルトニウムといった放射性元素も重金属に含まれていますが、上記のうち、カドミウム、鉛、水銀、6価クロムは特定有害物質使用制限指令(RoHS指令)【電子・電気機器における特定有害物質の使用制限についての欧州連合(EU)指令、日本語では電気・電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限に関する欧州議会及び理事会指令等という。】に指定されています。

また、日本においては、毒性のある重金属について、大気汚染防止法、水質汚濁防止法、土壌汚染対策法等、環境基本法にその基準が定められています。

環境基準 | 環境省 (env.go.jp)

ばい煙の排出規制 | 大気環境・自動車対策 | 環境省 (env.go.jp)