繊維製品への移染と規制関連について
ホルムアルデヒドとは、有機化合物であり、アルデヒドに分類されます。このアルデヒドのなかでは最も単純な構造をもつ、刺激臭のある可燃性気体です。水に溶けやすく、水に対し、ホルムアルデヒドが37%以上溶解した水溶液をホルマリンといいます。多様な工業製品に利用されており、例えば繊維製品では形態安定加工やプリント加工の際に利用されています。また、樹脂製品にも多く利用され、建材に利用される際はシックハウス症候群の一因となります。
ホルムアルデヒドの人体への影響として、ヒトの粘膜を刺激するため、目がチカチカしたり涙が出る、鼻水が出る、のどの渇き・痛みやせき、アレルギー性接触皮膚炎(かぶれ)などが懸念されます。
繊維製品の衣料処理剤による皮膚障害が昭和40年代から顕在化してきたことに伴い、それ以降、衣料等へのホルムアルデヒドに対する規制が整備され、昭和49年厚生省令第34号「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律施行規則」が施行されました。
すこし詳しく見ていきますと、ホルムアルデヒドの衣料への規制は、生後24か月までの乳幼児を対象としたものと、それ以外の2つに大別されます。生後24か月までの乳幼児は皮膚への刺激を受けやすく、また誤って口にしてしまうことも多いため、特に厳しい基準が設けられています。ベビー服がポリ袋に入った状態で販売されているのをよく見かけますが、これは外部から揮発したホルムアルデヒドがベビー服に吸着する(これを移染といいます)のを防ぐためです。ポリ袋には移染防止のため、袋を開けない旨が記載されています。また、大人にとってもホルムアルデヒドはアレルギー反応の原因となりうる物質であるため、下着、寝衣、手袋及びくつした等の肌に直接触れる製品は規制の対象となっています。
樹脂加工における発生と建材等から室内への汚染物質の放散
衣料へのホルムアルデヒドの移染の原因として、壁や棚などの建材等から放出されるホルムアルデヒドを吸着する場合があります。
建材には、木材の接着剤に樹脂を利用する場合が多く、その樹脂の種類の中にはホルムアルデヒドを原料として重合しているものがあります。例えば、ユリア樹脂やフェノール樹脂、メラミン樹脂などです。こういった樹脂は水分や熱によって原料が分解してしまい、その結果、ホルムアルデヒドが空気中に放散されていきます。
<ユリア樹脂の化学式>
放散する量によっては、シックハウス症候群の原因となる場合もありますが、現在はホルムアルデヒドが放散しないように色々と対策を講じている製品も多く、一概にこれらの樹脂を利用しているだけでホルムアルデヒドが放散してしまうというわけではありません。家具や壁紙、建材ではホルムアルデヒドの放散量を「F☆☆☆☆(エフフォースター)」で表し、目安にしています。