Knowledge

縫製の知識

検品に役立つ縫製知識

アパレル品を検品する際には、その製品が出来上がるまでの工程や縫製の知識が必要です。この縫製の知識は製造者としての知識ではなく、検品する立場として知っておくと、検品の精度も高くなるとQTECでは考えています。

多くの人の手を介して作られるアパレル品は、工程の途中で検品していてもどうしても欠点のある製品が出てしまいます。欠点がどの工程で起きるのか知識があると、完成品を検品する際の見るポイントになります。

縫製工程

 縫製の工程順に不良要因と検品ポイントについて説明します。

1.生地保管と検反

縫製工場に生地が入荷されると、裁断までの期間、倉庫で保管されますが、生地はすぐに使用するとは限らず、長期間保管されることもあります。

もし、生地倉庫の管理が出来ていない場合は生地の汚れ、色褪せ、劣化、臭い付着、カビなどが生じる場合があります。色褪せた生地や劣化が進んだ生地の使用を防ぐために、いつ仕入れたのか、いつまでに使用するのか、といった管理も必要です。

生地は縫製工場への出荷前にも検反されていますが、検反機を持っている縫製工場は検反し、織キズや汚れを裁断前に確認します。検反機は一定の速さで巻き取られた生地をほどきながら光をあて透かして見る仕組みです。

    (生地反毎の色比較)

 
  (検反の様子) 

【検反時の注意点】  
1)   汚れ、カビ、異臭がないか、触ってべとつきがないか、検反します。
2)   目立つ織キズがないか、製品から少し離れて見て検反します。
3)   ポリウレタン混生地や合成皮革などは、長期間保管した材料を使用している場合もあるので、劣化が始まってひび割れやべたつきがないか、注意深く検反します。生地倉庫の管理ができていないと、同じロットの中に劣化が進んでいる生地が混在してしまう恐れがあります。 

2.放反と裁断

1)   放反
生地を裁断台に広げる延反の前に生地をリラックスさせる工程を入れている縫製工場は品質が安定します。生地は紙管に巻かれる時にきついテンションがかかっていますので、ほどいてリラックスさせると本来の状態に戻ります。本来の状態に戻してから裁断すると寸法が安定しやすくなります。

生地をリラックスさせる方法は、一定時間生地を放置する「放反」と呼ばれる工程を入れることもありますし、スポンジングマシンを使用し加湿、加熱、冷却の工程を入れることもあります。

製品内や製品間の色差を最小限に防ぐ為には、反毎に識別番号を付けて管理することが重要です。縫製工場では基本的に製品は1反の中から作りますが、これは、反毎に色差が存在する場合があり、1着の製品で異なる反の生地を使用するとパーツ間に色差が出る可能性がある為です。縫製工場で生地の管理が出来ていれば、色差をある程度抑えることができます。

製品パーツを裁断するためには、型紙(パターン)が必要になりますが、縫製工場ではパターンの調整をする場合があります。

縫製工程の間に生地がどのくらい伸び縮みするか調べたり、洗い製品の場合は洗い前と洗い後の寸法を測定して調整分を計算し、ねらいの出来上がり寸法になるようにパターン調整します。また、縫いやすく欠点の出にくいパターンに微調整する場合もあります。

パターンをどのように並べて、効率よく裁断するか並べるのがマーキングの工程です。最近はコンピューターがマーキングを行い、そのデータを自動裁断機(CAM)に送り裁断するのが主流になっています。

いよいよ裁断となったら、通常、生地は何枚か重ねられて一度に裁断されます。一番上から一番下まで1枚ずつ識別管理され、色差を最小限に抑えるため原則1着は同じ1枚から縫い合わせます。

  (裁断の様子)

  
(放反の様子)参考:一般的に24時間~48時間生地をリラックスさせることが多い


   (裁断後パーツ)

【検品時の注意点】  
1)   生地の地の目が曲がっていないか、製品から少し離れて見ます。脇縫い目が左右同じように落ちているか見ることで、生地の斜行の確認ができます。ストライプやボーダー柄は曲がりが目立つので特に注意して見ます。
2)   柄合わせが必要な場合、上衿、ポケット、前後身頃などで柄のずれが生じていないか見ます。袖付けと身頃の横段柄合わせは通常、前腋点のあたりです。
3)   袖、カフス、衿先などは左右を合わせて、裁断ズレによる形状や寸法違いを確認します。
4)   製品の出来上がり寸法が仕様書と比較して伸び、縮みが生じていないかをメジャーで採寸します。量産品の寸法確認の方法としては、ニット、カットソー等比較的平面的な製品は、製品を重ねて出来上がり寸法にバラつきがないか見る方法もありますし、検品台に採寸ポイントの印を付けて比較する方法もあります。
5)   身頃と袖の色味が違う、右身頃と左身頃の色味が違うなど、1枚の製品の中で色ブレが起きることがあります。同じロットでも色味が違って見える色ブレが起きることもあります。基準となる正しい見本と色差を比較したり、製品を並べて比較すると、色ブレがあるかないか確認できます。

3.縫製

縫製工程は、おおまかに言うと、前段取り→パーツ縫製→組み立て→まとめとなります。

前段取りでは、パーツに芯地を貼ったり、アイロンで縫い代を折るなどの縫製の準備をします。通常、芯地は接着樹脂を熱で溶かして圧力をかけ生地に接着させる接着芯地が一般的です。接着芯地が生地に設定 通りに付くよう、芯地接着機の温度、圧力、時間の調整をしなければなりません。接着芯地がうまく付いていないと剥離が起き、生地表面からぶくつきが出たり、接着芯地と表地の織り糸の相性によりモアレが見えることがあります。

縫製工場では、たくさんのミシンを使用して流れ作業で製品にしていきます。すべてのミシンの調子が良く、すべての工員の技術が高ければ良いですが、なかなかそういうわけにはいきません。下糸がなくなっているのに気づかず縫い進めたり、目飛びが起きたり、縫込みによって生地がつれたり、左右間違えて縫い合わせたり、と縫製不良が生まれる要因はたくさんあります。その他、刺繍工程、プリント工程などデザインによってはいろいろな工程があり、外注に出されている場合もあります。釦付けや糸始末などのまとめ工程は、手作業で行われることもあります。このように縫製に起因する不良は、設備によるもの、作業者の熟練度によるもの、素材とデザインや仕様によるものなど複数の要因が複雑に交わっており、完全に無くすことが出来ない課題となっています。こうした縫製不良を早めに発見して対策をとるために、完成品になる前の中間で検品を行う工場もあります。

【検品時の注意点】  
1)   縫い目に張力を加えて、縫い糸が糸切れを起こさないか検品します。カットソーやストレッチ素材のように伸びのある生地に対して縫い目の張力が追従しないと、着用使用時に縫い糸が切れてしまいます。ズボンの尻ぐりや袖ぐりは、着用時の動きに耐える張力や強度が必要です。縫い目は丈夫なのに、生地の織り糸が外れる滑脱という不良が起きることもあります。滑脱の場合は、縫い代が浅く縫われている単発不良の場合もありますが、滑脱防止の対策をとっていなかったために連続不良になることもあります。
2)   ポケットやあき部分が使用してすぐにほつれないか、ある程度の力を加えて検品します。必要なところにカンヌキなど補強縫いがなされているか確認します。
3)   縫い目周辺の生地の糸が切れて地糸切れ(針穴キズ)が生じていないか、縫い目を開くようにして見ます。特にカットソーは、縫製工程の管理によってはこの不良が出やすく連続不良になりやすいので注意します。
4)   釦をつかんで動かし、釦付けの糸が緩まないか、ほつれないかを確認します。ボタンホールの目飛びはミシンの調子によるので連続不良になりやすいので注意します。
5)   表地の表面に空気が入ったかのようにぶくつきが見られることがあります。毛織物等が湿度によって伸び縮みする現象(ハイグラルエキスパンション)によって起きている場合は、縫製工場の湿度管理がうまくいっていなかった場合もありますし、季節によってはきれいにシワが伸びる場合もあります。芯地が生地から剥離してぶくつきが起きている場合は、縫製工場の芯地接着管理がうまくいっていなかった場合、芯地が生地に適していなかった場合が考えられます。芯地に関してはこのほかに、接着樹脂が生地に染み出していたり、樹脂が透けて見えるなどの欠点もあります。

4.仕上げアイロン

縫製後に製品のかたちを整える仕上げアイロンの工程があります。品種によって設備は異なります。カットソーやニットは仕上げアイロンで設定仕上げ寸法になるように型にはめてプレスすることがありますし、スーツのように立体的に成型するためのプレス設備もあります。仕上げアイロンで欠点を作らないようにしなければなりません。プレスあたり、テカリ、プレスシワなどアイロンをあてることによって起きる欠点のほか、アイロンから落ちる水滴によって水じみが起こることもあります。アイロン、プレス設備は、良いスチームが安定的に出ること、プレス台の固さが製品に合っていることなどが大事です。

【検品時の注意点】  
1)   プレスあたり、テカリなど欠点がないか、製品全体を見ます。
2)   水じみに注意します。
3)   ズボンのセンターラインプレスが左右均等に入っているか、線が1本きれいに入っているか見ます。

5.下札付けと袋入れ

下札を正しく製品に取り付け、梱包します。梱包はたたんで袋入れか、ハンガーにかけて袋をかけるかになりますが、いずれにしてもきれいな状態で納品できるよう注意します。ネックキーパーや台紙など、保形資材を入れる場合は指示どおりに入れるようにします。ハンガーにかけるビニール袋は、製品が汚れないよう適正な長さにします。通常は製品の裾から10㎝くらい長くします。極端に長すぎると物流作業上よくありません。

【検品時の注意点】  
1)   ブランドネーム、サイズラベル、縫い付けラベル、下札を照合し、内容が合っているか、向きが正しいか、移染、汚れ、折れ、破れがないか確認します。
2)   コンテナで運ばれてきた製品は特に、ネーム類、下札が製品に密着し移染する可能性がありますので注意します。

6.検針と梱包、出荷

製品に折れ針などが残っていないか確認するために、検針してから出荷します。通常は鉄片を感知できるベルトコンベア検針機を使い、異物がないことを確認します。金属製の付属類は検針対策品(NC商品)を使用すれば検針機を使って検針できますが、使用数や位置によっては使えない場合もあります。検針はベルトコンベア検針機のほか、卓上型、ハンディ型があり、それぞれの特性を活かして使い分けします。検針機が使えない場合はX線検査機で異物がないか確認することもあります。検針が済んだ製品、これから検針をする製品、異物が発見された製品は明確に分け、混在しないように注意します。

検針が済み安全性が確認された製品は、梱包され出荷準備します。物流移動中に荷崩れしないよう注意して梱包します。ハンガー納品の場合は、製品が押されて型崩れしないよう詰めすぎないようにします。コンテナやトラックに載せる際は、荷室の中を観察し製品を汚染する要素がないか、荷崩れやハンガーバーは頑丈か、など確認します。

【検品時の注意点】  
1)   カートンの潰れ、破れ、水濡れがないか確認します。もしある場合は中の製品に影響がある場合があります。
2)   袋から製品を出す前に、袋に異常がないか、袋の中に異物がないか確認します。袋から出したときに異臭がないか確認します。
3)   不良札や検針異常品札などが付いたままの製品が混在していないか確認します。