Knowledge

検品環境の知識

設備

効率よく正しい検品をするためには、設備を整えることが重要です。

1.  採光

 1)   自然光の場合
    a.  色違いなどを適正に判断するため、北窓自然光を取り入れます。
    b.  直射日光が差し込む場合は遮光します。

 2)   照明の場合
    a.  照明器具は、40W反射笠付き蛍光灯を標準とします。 
    b.  検品台の照度は1000lux以上を標準とし、場所によって暗くならないようにします。
    c.  室内の照明が昼間の屋外を再現しているか、光源の演色性を調べる検査キットで調べておくのも
    一つの方法です。

2.  換気、空調

 1)   換気
   a.  建物の容積に応じた換気設備を設置します。
   b.  プレスなど熱源を伴う作業場は、換気設備およびバキューム排気口を設置します。
   c.  汚れ落としなど化学薬品を使用する作業は、強制排気を行います。
   d.  ベビー衣料を扱う場所は、ホルムアルデヒド移染調査を行い、適切な場所であるか確認します。

 2)   空調
    a.  季節的自然条件による暑熱、寒冷、多湿などがないように空調管理します。 
    b.  毛、レーヨンなど素材に影響がある場合は、温湿度管理をし製品への影響を抑えます。

3.  建物の構造

 1)  
     検品作業場は、糸くず、埃のつかない床が望ましいです。

 2)  
    a.  直射日光が差し込む窓は遮光します。
    b.  開く可能性のある窓は防虫網戸を使用して虫の侵入を防止します。

 3)   出入口
    a.検品作業場へは、決められた出入口から出入りします。
    b.雨、風、埃など、外の環境の影響がないようにします。

 4)   防振・防音
    a.   検針機設置場所は、誤作動を防ぐため防振対策をします。ミシンなど振動があるものは
    検針機のそばに置かないようにします。
    b.   振動、騒音があり他の作業に支障のある機器は、影響のない場所に設置するか防振対策を
    とります。

 5)   建物安全
    a.   風雨の浸入、水漏れ、害虫等の小動物の侵入、及びダニ・カビ・異臭の発生を防ぐ対策を
    します。
    b.   万が一発生した場合は、早急に対策をとります。

4.  検品台と作業設備

 1)   検品台
  a.  幅180㎝、奥行90㎝、高さ80~90㎝が一般的です。 
  b.  高さは、作業者の身長、作業内容に合わせて調節します。
  c.  色は無彩色、淡灰色が望ましいです。
  d.   設置台数、配列により調節し、隣同士の製品が重ならないよう、作業に必要な広さを確保
   します。

 2)   人台(ボディ)
  a.  ジャケットなど立体検品を行うときに使用します。平面検品ではわからないツレや、外観
   の欠点がわかります。
  b.  サイズに合った人台が揃えられない場合は、中間サイズとします。

 3)   検灯器
  a.  ニット製品の編地キズ、縫い目パンクの検品に使用します。 
  b.  編地を光に透かしてみることができるので効率的に検品できます。

 4)   置台、かご
  a.  作業効率を上げるために活用します。
  b.  不良品、良品、補修上がり品などの識別に活用し、混在を防ぎます。色で分けるなど、識別
   しやすくする工夫をします。
  c.  大きさなどは使用目的に合ったものを使用します。

5.  検針機、X線検査機

  a.  針など身体を傷つける異物が混入していないかを確認するために使用します。
  b.  検針機、X線検査機は、取扱説明書をよく読み正しい使い方をします。
  c.  機械の制度を担保するため、感度確認をし、必要なメンテナンスをします。

6.  補修その他付属作業

 1)   補修
  a.  補修は検品、検針作業とは別に取り扱うようにします。
  b.  補修場所は、検品・検針作業場所と区切り、検品・検針作業場所への外来補修者の出入りは
   させないようにします。

 2)   汚れ落とし
  a.  化学溶剤は使用場所を限定します。 
  b.  化学溶剤の保管場所は、保管に適した場所に設置します。
  c.  噴霧溶剤は、室外へ強制排気させます。

 3)   仕上げアイロン
  a.  設置場所を限定し十分な広さを確保します。
  b.  換気扇、バキューム排気口を設置します。

7.  その他

 1)   搬送用具
  a.  カートンの運搬に、手押し車、ローラーコンベア等を使用すると効率的です。
  b.  バラの製品は、カゴなどに入れて整理します。

 2)   スノコ
     倉庫保管は、棚、スノコを用い、カートンを床に直置きしないようにします。

 3)   服装
  a.  工場内は、原則として上履きを使用し、下履き箱は通用口に設置します。
  b.  作業服、および帽子または三角巾を着用し、責任者は色分けします。
  c.  個人用ロッカー等を設置し、私物・飲食物は作業場に持ち込まないようにします。

針・用具管理

  針類、危害物の製品への混入を防止するため、支給、保管、在庫数量の帳票管理を行い、個人での
 持ち込みを禁止します。

 1.  管理対象物品

 1)   針類
   ミシン針、手縫い針、マチ針、虫ピン、カギ針、タグガン針、ステープラー針など。検針機に
  反応しない針は使用しないようにします。

 2)   備品類
   ハサミ、小ばさみ、目打ち、カッターおよび交換刃、ピンセット、毛抜き、豆札など。

 3)   その他 
   釘、ネジ、画鋲、ガラス破片、木片、プラスチック破片など。

2.  工場全体の管理

 1)   仕入、支給、保管は一括管理とし、専任担当者を設置し種類別に帳票管理をします。

 2)   在庫、帳票の保管場所を設置し、常時帳票と数量の照合ができるようにします。

3.  現場の管理

 1)   ミシン針
  a.  種類別に受入、支給、保管、記帳をします。
  b.  ミシンには装着する針以外の予備の針は支給しないようにし、数量管理を確実に行えるよう
   にします。
  c.  針交換の際は、針交換管理表等の帳票を用いて、回収針は必ず保管、記録します。
  d.  折れ針は、破片を回収し元の1本になるように復元し保管し、記録します。

 2)   その他の針類、備品類  
  a.  ミシン針同様に、種類別に受入、支給、保管、記帳をして記録、保管します。
  b.  班単位、または個人ごとに配布した針類、備品類の配布一覧表を作成し管理します。
  c.  使用できない針類、備品類は、回収し、記録を作成し廃棄します。
  d.  紛失した場合は、責任者に報告し、仕掛品に混入がないことを確認します。紛失届を作成して
  支給を受けるようにします。

 3)   外部者の持ち込み備品 
  a.  作業場への持ち込み、使用は原則禁止し、必要な備品は工場から貸し出すようにします。
  b.  やむを得ず作業場に持ち込む場合は、持ち込む針類、備品類を記録し終了時に保有数量を確認
  します。

5Sの習慣

 効率よく正しい検品をするために、5Sの習慣を身につけます。

 1.  整理

 必要なものと不必要なものを分けて、不要なものを捨てること。

2.  整頓

 必要なものを必要な時に誰でも使えるようにすること。

3.  清掃

 整理、整頓された状態をきれいに維持、点検することで異常に気が付くこと。

4.  清潔

 整理、整頓、清掃が維持管理できる仕組みで、職場が正常な状態を保つこと。

5.  しつけ

 ルールを守り、自主自律的に5Sを推進できる人材を育てること。

 5Sを守ることによって、良品と不良品の混在、未検品と検品済みの混在、備品類の製品への混入などを
防ぐことができます。

検品結果に影響を与える因子

検品の見逃しは検品員の身体的、精神的条件に起因するといわれています。

 1.  身体的条件

 健康、疲労、加齢効果、熟練度、勤務条件

2.  精神的条件

 記憶と忘却、意欲、慣れ、心労

3.  環境と作業条件

 照明、温湿度、換気、検査姿勢、作業場レイアウト

4.  時間

 コミュニケーション、検品、仕様確認、判断と確認

  検品は五感を使う作業なので、疲労すると検品結果に影響します。見逃し、確認もれを防ぐために、
見本や基準と比較しながら検品することが重要です。書類と照合したときは確認したところにレ点チェ
ックをして確認もれがないようにします。検品の途中で慣れが生じたり、時間がなく焦りを感じながら
検品すると見逃してしまうことが起きます。
 検品結果に悪い影響が出ないように、作業場を管理することが大事です。

検品の精度

 検品精度を次のように分類して管理者が確認することで、検品結果に影響を与える因子である、熟練度、意欲、慣れなどを把握することもできます。

 1.  適中

 欠点のある製品を検品し、欠点ありと答えた正しい判断。

2.  見逃し

 欠点のある製品を検品し、欠点なしと答えた誤った判断。

3.  通過

 欠点のない製品を検品し、欠点なしと答えた正しい判断。

4.  虚報

 欠点のない製品を検品し、欠点ありと答えた誤った判断。