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AQL(合格限界品質)の知識

概要

AQLとは英語で「Acceptance Quality Limit」の略であり、「合格限界水準」「合格品質限界」と訳されます。AQLは抜取検査をする際に用いられる手法の1つとしてアパレルの分野に限らず、歴史的にみて工業品や軍事品に広く用いられています。日本産業規格(通称JIS)においても「JIS Z 9015-1 計数値検査に対する抜取検査手順-第1部:ロットごとの検査に対するAQL指標型抜取検査方式」として確立しています。合否の判定には数学的確率計算を用いて、合格とする不良数が決められます。特徴としてはロット(生産数や出荷数)全体に含まれる不良の割合が、AQLで定めた値よりも小さいロットが高確率で合格するような検査結果となります([例]参照)。抜取検査を用いるメリットとしては、全数検品に比べて検査数を減らすことができるため時間やコストを削減することができます。ただし、すべての製品を検査するわけではないので、生命や財産、ブランドイメージを著しく損なうような不良に対しては、適用することはお勧めしません(例:検針)。そのため主にアパレル業界では出荷時の縫製・外観の検査や副資材の受入時の検査に用いられています。

[例]AQL 1.5の場合
ロットの不良率が1.5%以下のロットであれば95%以上の確率で合格となります。逆に不良率が1.5%を超えるロットは急激に合格率が下がり、合格しにくくなります(不合格となる確率が高まります)。

AQLによる抜取検査手順

ここからは抜取検査の手順を説明します。

抜取検査に必要な情報

1)ロット数 (生産数・出荷数など)
2)AQL
3)検査水準 ※1
4)検査のきびしさ ※2

このうち2)~4)は納入先のルール等で決められるものになります。

サンプル文字の決定

下記サンプル文字一覧よりロットサイズ及び水準に対応したサンプル文字を決定します。

サンプル文字一覧

抜取数・合格判定数・不合格判定数を決める

抜取表からサンプル文字の右側のサンプルサイズ(抜取数)が分かります。また、サンプル文字とAQLの値の交わるところから、抜取数・合格判定数・不合格判定数を求めます。

 

[補足]
※1 検査水準とは抜取検査の精度を決めるものを意味します。通常水準と特別水準があり、精度が高いほど検査数(抜取数)は多くなります。逆に精度を下げる代わりに検査数を減らすことが出来ます。

※2 検査基準のきびしさを意味します。抜取表には”なみ” ”きびしい” ”ゆるい”の3種類があり、通常は”なみ”から始め、検査結果に応じて”きつい” ”ゆるい”と変化させることができます。きびしさの移行はルールに従って行います。

例)ロットサイズ500枚、検査水準Ⅱ、なみの検査(検査のきびしさ)、AQL 2.5の場合
手順1 サンプル文字一覧からロットサイズ500(横)と検査水準Ⅱ(縦)の時のサンプル文字は”H”ということが分かる。
手順2 抜取表からサンプル文字”H”のサンプルサイズ(抜取数)は50であることが分かる。そして、サンプル文字”H”(横)とAQL 2.5(縦)の時を読み取ると、Ac(合格判定数)が3、Re(不合格判定数)が4となる。

したがって、抜取方式は抜取数50枚、不良数3枚まで合格、4枚以上は不合格となる。